「もしも」の時に社員や家族に重荷を負わせない。60人の人生を託せるパートナーへ
事業承継を考え始めた大きなきっかけは、コロナ禍による先行き不透明な社会情勢でした。当時、当社には約20名の社員がおり、その家族を含めれば60名近い人生に責任を負っているという実感が、より一層強くなりました。
不動産開発という業態の特性上、私個人が数十億円規模の債務の連帯保証人となっていました。私自身は創業以来、その重圧を背負う覚悟を持ってやってきましたが、もし私に万が一のことがあった際、経営経験を持たない私の家族や社員がその重責を突然引き継ぐことになれば、それはあまりに過酷な状況を生んでしまいます。
「誰にこのタスキを繋ぐべきか」。社員が20年後も安心して働き続けられる環境を守り、かつ彼らに不条理なリスクを負わせないためには、信頼できるパートナーへの事業承継が、創業者として最も責任ある選択だと感じました。
自社の文化とLivenup Groupの強みが共鳴する。互いの良さを尊重し、相乗効果を最大化できるパートナーシップ
承継先を探す上で最も重視したのは、これまで築き上げてきた「会社の文化」を大切にしてくれることでした。不動産業界には、非常にアグレッシブな営業主体の会社も多いですが、当社は一歩一歩信頼を積み上げる丁寧な仕事を得意としています。異なる文化を持つ組織と手を組むのであれば、双方が歩み寄り、共に高め合える関係性が不可欠でした。
数ある選択肢の中で、Livenup Groupは私たちのスタイルを深く尊重し、寄り添ってくれると感じさせてくれました。彼らは、私たちが培ってきたノウハウを「グループにとっての新たな資産」として捉えてくれたのです。
単にグループに入るのではなく、私たちが持つ強みを活かしながら、Livenup Groupの持つリソースや活力を柔軟に取り入れる。そんな「互いの強みを補完し合う関係」により、私たちが大切にしてきた文化をより強固に、より魅力的なものへと進化させられる確信が持てたことが、最終的な決め手となりました。
広い視野で自社の「価値」を再認識する。グループインがもたらした、社員一人ひとりの気づきと成長
グループインによる最大の変化は、社員たちが「外の世界」に触れることで、これまでの当たり前を客観的に捉え直す機会を得たことです。一つの組織の中だけで完結していた視点が、グループ会社との交流や協業を通じて、より広い視野へと拡張されました。これはまさに、井の中の蛙が大海を知るプロセスであり、広い世界を見ることで初めて、自分たちが当たり前だと思っていた仕事の「質」や「価値」を再認識できる機会になりました。
外部からの視点が入ることで、「自分たちのやり方は、実はこれほど強みになっていたんだ」という発見があり、それが社員一人ひとりの新たな自信や誇りの形成に繋がっています。環境が変わることで、慣れ親しんだルーティンを見直し、改善すべき点に向き合う機会も増えました。こうした経験は、変化の激しい現代において社員が自立して成長していくための大きな糧になっています。グループの一員となったことで得られた多角的な視点は、組織全体に健全な活気をもたらしており、社員一人ひとりが以前よりも広い視野で自分の仕事を見つめ直せるようになっていると感じています。
一歩引いて気づく組織の本質。私自身の新たな学びと次なる挑戦
事業承継を終えた今、最も強く感じているのは、落ちついた時間の中で組織を「俯瞰」して見ることによる新たな発見です。経営の第一線でハンドルを握っていた頃は、営利企業として利益をあげ、会社の維持、発展を目指し、また、社員が安心できる生活を送れる環境を整えていく責任の中で、限られた時間や情報の中で日々の決断の連続でした。その自分の決断を顧みる時間も限られていました。しかし今、一歩引いた場所から組織を見守ることで、以前よりも冷静に、組織の本質的な強みや将来性を感じ取ることができています。
「ここがうちの本当の強みだったんだ」「ここはもっとこうすれば良くなる」。こうした発見の連続は、私自身の成長にも繋がっており、非常に面白い経験だと感じています。一歩引いたからこそ見える景色があり、それが今の自分にとって大きな学びになっています。
現在は、新しい経営陣が責任を持って舵取りをしてくれています。その姿を信頼して見守りながら、私自身も新しいフェーズでの挑戦を楽しんでいます。事業承継とは、単なるバトンタッチではなく、創業者にとっても、社員にとっても、そして会社にとっても、より大きな成長へと漕ぎ出すための「新しい船出」だったのだと、実感しています。